
はじめに:なぜeCTD v4.0が日本にとって重要なのか
日本のPMDA(医薬品医療機器総合機構)は、2021年第2四半期に実施されたパイロットの成功と2022年からの任意受理を踏まえ、2026年までにeCTD v4.0申請を義務化する明確な道筋を示しています。短縮化されるスケジュール、国際的な規制調和の推進、そして急増する申請資料数によって規制業務がますます複雑化する中、ライフサイエンス企業および薬事チームには、包括的で正確なプロセスと、将来を見据えた統合型RIMS(Regulatory Information Management System)が必要不可欠です。これにより、申請を円滑に進めることができます。
日本eCTD v4.0申請のベストプラクティスと最適な電子薬事申請支援ソフトウェアの選び方
このブログでは、Freyrが日本のPMDA、米国FDA、欧州EMAなど複数のクライアントおよび規制当局と連携してきた経験を基に、eCTD v4.0申請におけるいくつかのベストプラクティスをご紹介します。以下は、PMDA申請を成功させるための推奨ベストプラクティスの概要です。
Freyr が提案するeCTD v4.0 申請のベストプラクティス
ICH および PMDAのeCTD v4.0要件 の理解
- eCTD v4.0 ガイドライン、ICH および PMDAの要件、Controlled Vocabulary、検証基準を理解する
- 最新動向を理解するため、規制専門家によるワークショップに参加する
現状のPMDA/ グローバル申請プロセスの見直し
- 現行の申請プロセスやシステムに対するギャップ分析を実施
- eCTD v4.0の新要件に 準拠していない部分を 特定する
eCTD v4.0に対応したソフトウェア・プロセス・ツールへアップグレード
- 規制当局が求めるすべての機能・構成に対応したeCTD v4.0準拠ソフトウェアを導入する
eCTD v4.0 アドバイザリー体制の 構築
- E-2-E (End-to-End) 規制サービスプロバイダーと連携する
- パートナー (例:Freyr)とプロセスおよび技術面で協働する、またはクライアントの体制と連携する
- 進化する規制要件へのコンプライアンス維持のため、業界リーダーと連携する
- グローバルおよびローカルの規制申請・運用サービスを提供するパートナー(例: Freyr )を活用する
eCTD v4.0 トレーニング
- 社内チームに向けた eCTD v4.0 トレーニングセッションを実施する
- eCTD v4.0の概要
- PMDA ガイドライン
- プロセス トレーニング
- 実践的なソフトウェア トレーニング-パイロット提出やサンプル提出
パイロット提出
- 本格導入前に、eCTD v4.0のパイロット提出または概念実証(PoC)を実施
また、主要な要件の1つは、適切なテクノロジーと電子薬事申請支援ソフトウェアを特定し、選定することです。Freya.Fusionは、Freyrの次世代AIファースト・プラットフォームであり、データの完全性、コンプライアンス、速度、そしてグローバルな可視性を確保しながら、薬事情報管理をエンドツーエンドで提供します。
以下のチェックリストに従うことで、次のことが可能になります:
- eCTD v4.0構造上の核心的な革新点を理解する
- フェーズ別実施計画を作成する(開始から提出完了までの3〜6か月を視野に)
- 適切なテクノロジーパートナーおよび電子薬事申請支援ソフトウェア(Fusionなど)を特定・活用し、あらゆる工程を自動化・検証・最適化する
Freya.Fusionの統合型AI搭載RIMS(Regulatory Information Management System)の詳細は、 https://www.freyafusion.com/freya-fusion-unified-ai-first-rim-platformをご覧ください。
主な構成要素:eCTD v4.0実装のポイント アーキテクチャ、コンテキストオブユース(CoU)、UUID、コントロールドボキャブラリー
- シングル・サブミッションユニット eCTD v4.0の中核は、モジュール1~5を1つのパッケージにまとめた単一のXML交換メッセージ構造です。これにより、従来必要だったM1ファイルとM2~M5(地域別ファイルおよびインデックスファイル)の別管理が不要となります。この統一構造は、送信エラーを削減し、PMDAでの処理を効率化します。
- ドキュメント・ライフサイクル管理の強化
- UUID により、申請間での文書の詳細な追跡やコンテンツの再利用が可能に
- Context-of-useキーワード:PMDAおよびICHに基づくセクション見出しにキーワード属性を付与し、既存メタデータを更新
- ライフサイクル管理操作:1対1、1対多、多対1といった多様な文書ライフサイクル運用に対応
- コントロールド・ボキャブラリ(CV):PMDAおよびICHの基本項目に沿った標準化値を設定し、製品カテゴリ、試験データカテゴリ、文書タイプ、グループ順序などのメタデータ情報を統一化・調和
- これらの革新により、かつてない柔軟性、監査性、そして審査者の画面ナビゲーション性が大幅に向上し、真に将来対応型の申請プラットフォームの基盤が築かれます。
日本eCTD v4.0申請成功のためのステップバイステップのチェックリスト
フェーズ1 – ギャップ評価と計画立案(提出3〜6か月前)
- eCTD v4.0の理解 第三者の専門パートナーが実施するワークショップやウェビナーに参加し、v3.2.2からv4.0への主要な変更点を学びます。具体的には、優先番号(Priority Numbers)、グループタイトル(Group Title)、UUIDの概念、ライフサイクルの変更、シーケンス番号、CV(コントロールド・ボキャブラリ)更新、単一パッケージ提出、その他 eCTD v4.0 の主要概念(地域要件とICH標準の両方)を含みます。
- 既存のPMDA/グローバルプロセスの見直し: 現在の申請プロセスおよびシステムに関して、詳細なギャップ分析を実施します。 現行プロセスの中でeCTD v4.0の新要件に適合していない点を特定します。
- 技術評価とCV管理
- スキーマ & 検証ツール:既存のRIMSがHL7 v3 RPSスキーマに対応しているか確認する
- CV同期(Synchronization):理想的には、規制申請ソフト(例:Fusion)にCVマネージャー機能が内蔵されており、PMDAおよびICHの最新コントロールドボキャブラリー更新をリアルタイムで自動取得できることが望ましい。これにより、手動でのインポートやCV同期維持の負担がなくなります。
- レギュラトリーインテリジェンス:提出に影響を与える可能性のあるグローバル/地域のガイダンス変更を特定し、最新の基準に基づいてSOPを確定できるようにする。
- チーム研修とチェンジマネジメント
- ツール特化型セッション:選定した電子申請支援ソフトウェアに関するトレーニングセッションをチームが受講し、ワークフロー、地域特有の差異、検証機能を理解する
- SOP更新:既存のSOPを改定し、薬事チームが現行プロセスおよび新たな規制変更に適応できるよう教育する
- Fusionは、200以上の市場から収集された10万件以上の検証済み規制情報の厳選リポジトリにアクセスできるだけでなく、AIとエージェント型ワークフローを活用して、チームの手作業負荷を大幅に軽減します。
フェーズ2 – パートナー選定、システム実装およびテスト(提出3〜6か月前)
- 専門パートナーとの連携 エンドツーエンドの規制業務サービスを提供できるパートナーを特定し、提携します。グローバルな専門知識に加えて、日本国内での薬事オペレーションやサービスも提供できるパートナーと連携することが重要です。
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ソフトウェア統合
- チームのニーズに最適なソフトウェアツールやサブモジュールを特定する
- 既存のDMS(Document Management System)と接続し、メタデータおよび文書の同期をシームレスに実現する
例として、当社のAI搭載ツール「Freya. Fusion」は、クラウドベースの統合型RIMSです。スイート全体のライセンス料を支払う必要はなく、必要なモジュールだけを選択して利用できます。
- スキーマおよびコントロールド・ボキャブラリ(CV)の検証テスト
- 規制対応ソフトのシーケンスレベル発行機能を使用し、ICHスキーマおよびPMDAの検証ルールに基づいたサンプル交換のバリデーションを実行する
- コントロールド・ボキャブラリ(CV)シナリオをテストする:新しいカテゴリ・イベントタイプや文書タイプの追加、既存CVやコード体系値の変更など、さまざまな制御ボキャブラリー更新シナリオを準備し、ソフトウェアのコード改修なしで更新が反映されることを確認する
- ユーザー受け入れテストおよびパイロット申請
- 「initial-b」「initial-c」または「initial-a」タイプの参照申請を作成し、PMDAの電子ゲートウェイシステム経由で送信するなど、少なくとも1回はエンドツーエンドのパイロット申請を実施し、送信やバリデーションに関する課題を洗い出す
- eCTD v4.0のPMDA向け申請(参照申請や新申請など)を構築し、要件に沿った堅固な基盤を整えることで、申請プロセスを円滑化し障害を回避する
- eCTD v4.0対応のバリデーターとビューアを使い、申請出力を徹底的にレビュー・検証して、規制当局(HA)からのリジェクトを防ぐ
フェーズ3 – 申請準備(提出1〜3か月前)
- 地域別メタデータ情報
- PMDA関連情報(申請詳細、申請データ、製品審査要素、参照情報など)をすべて収集し、地域別メタデータを作成する。
- M1仕様のフォルダ構造(例:申請書、証明書、表示[ラベリング]等)に従って、ユーザーセクション見出しの下で、各文書を適切なPMDAコンテキストに割り当てる。
- キーワード情報、コントロールドボキャブラリー(地域およびICH)、CTD文書
- 有効成分(Substance)、製造業者、製品、添加物(Excipient)、適応症などのキーワード情報を作成・統一し、マスターデータを準備する。
- ユーザー定義のキーワード情報が必要となる箇所に、この情報をモジュール2〜5へ適用する。
- 申請構築
- 文書をeCTDソフトウェア(例:Submit)にアップロードし、eCTD v4.0実装基準に従ってsubmissionunit.xmlおよびその関連コンポーネントを構築する。
- コンパイルとバリデーション
- eCTD v4.0スキーマ基準に従って申請をコンパイルし、PMDAの「Validation Checklist v1.6.0.1」に準拠してバリデーションを実施する。
- 申請内容のレビュー
- eCTDビューア(Submit Viewer)を用いて申請をレビューし、文書間のナビゲーションや、重要要素を強調表示した効率的なメタデータ表示を可能にすることで、審査プロセスをスムーズに進められるようにする。
フェーズ4 – 最終申請QC(数週間前)
- 最終チェックと監査トレイル(Audit Trail)
- 定義されたeCTD v4.0チェックリストの項目に従い、すべての申請が正しく作成・レビューされていることを確認する
- 申請の責任者(オーナーシップ)を追跡し、21 CFR Part 11に準拠した電子署名付き監査ログを生成する
- 申請送信と受領確認
- 単一XMLパッケージをPMDAの電子申請ゲートウェイ(Electronic Submission Gateway)にアップロードする
- PMDA審査部門における申請送信の正常処理に関する受領確認(Acknowledgement)を追跡する
Freyrの最新プラットフォーム Freya. Fusion は、クラウドベースの規制対応ツールとして、業界で初めて日本向けeCTD v4.0モジュールを搭載し、すでに顧客利用が可能な状態で稼働しています。これは、上記すべての機能に加え、さらに幅広い機能を備えています。
なぜeCTD v4.0は画期的なのか ― そして適切なツールで先手を打つ方法
eCTD v4.0は、単なるバージョンアップではなく、規制申請におけるパラダイムシフト(枠組みの転換)です。
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この段階的チェックリストに従い、テクノロジーの力を活用することで、次のような効果が期待できます:
- AI駆動によるバリデーションと自動化で手作業を削減
- より迅速な規制当局承認を実現
- コントロールドボキャブラリーとリアルタイムCV更新によりコンプライアンスを強化
- UUIDを活用した再利用やライフサイクル管理操作、複製により申請を将来対応型に
進化の速い規制業界で常に先を行くために、Freyrがどのように支援できるかをご確認ください。
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著者について
ラガヴェンドラン・バブ(ラガヴ)氏は、グローバルな保健当局への申請業務において20年以上の経験を持つ、熟練した規制業務のリーダーです。Freyr社の規制業務ディレクターとして、規制申請戦略、eCTD/NeeS/紙媒体での申請、さらにはAIの応用や構造化コンテンツソリューションなどの革新的な規制テクノロジーにも注力しています。
業界における専門家として、eCTD v4.0、SPL、SPM、ePIなど進化する規制標準を主要市場で先導的に導入・実装した実績があります。技術チームと密接に協働し、規制ビジネスのニーズと実用的かつ拡張可能なソリューションとの整合を図る一方で、社内外のトレーニングプログラムも主導し、規制対応力の強化にも貢献しています。ラガヴ氏は、化学の学士号およびシステム&情報技術専攻の経営学修士号(MBA)を取得しています。

モヒト・バトラ博士は、医学博士であり、ライフサイエンス、デジタルヘルス、規制業務分野で12年以上にわたるグローバルな経験を有する優れた戦略コンサルタントです。現在はFreyr Solutionsにて、規制業務のグローバルビジネスおよび戦略部門の責任者(シニアディレクター)を務めており、医学的専門知識と戦略的洞察を融合させた独自の視点を提供しています。バトラ博士は、デリー大学で医学博士号(MD)を取得し、インド経営大学院(Indian School of Business)でMBAを取得しています。